元来地形が厳しい国、日本に血管のように張り巡らされた鉄路は、カーブや坂の連続で高速化を阻む主要因ともなっており、いかにこれらの要因を克服するか頭を捻らせてきた過去があります。その答えとして編み出したのが、カーブでも速度を落とさず走ることでした。
振り子式気動車のパイオニア的存在のJR四国2000系です。なんでもディーゼルカーでの搭載は世界初なんだとか。なお、車体を傾斜させること自体が高速化に繋がるわけではなく、カーブを高速で通過すると遠心力で身体が外に振られて乗り心地や安全性に影響が出るため、遠心力を打ち消すために傾けさせているというのが正しいようですね。
JR四国ではとにかくアンパンマンを全力で押してくる会社としても有名です。高知県が作者のやなせたかし氏の出身県というのもありますね。そういうこともあって2000系にはアンパンマン列車も存在しており、全面にラッピングを施しています。実際見るとかなり強烈ですよ、これ。画像は気動車で運転される「いしづち」です。今では列車・このデザイン共々見られなくなっています。
このように非貫通のパノラマグリーン車両も存在します。・・むしろこっちの方が有名ですね(笑)
そしてこちらにもアンパンマン列車が。画像は宇和島直通の「しおかぜ」です。こちらも今では姿を消しており、2000系のアンパンマンは「南風」でしか見られなくなりました。
それでは参りましょう、デッキドアです。プラグドアとなっており、クローズキャンセル機構が無いため一旦閉まり始めると完全に閉まるまで止まりません。駆け込み乗車をしないよう、余裕をもってホームへ行きましょう。なお、ドアの窓は登場時よりも小さくなっています。逆のケースは時々ありますが、小さくなるのは珍しいですね。
ゴミ入れです。ピクトグラムのみの簡単な表示となっています。
トイレです。民営化からあまり時間が経っていない時期の登場なのか、中は和式となっています。
洗面台です。陶器を黒塗りにして高級感を出しています。今も作動しているかは不明ですが温度調節用のツマミがあるのが時代を感じさせます。
かつて喫煙スペースだか公衆電話スペースとして使われていたであろう小部屋です。
中はこの通り、カーブだらけの沿線事情だけに一応緩衝材的に木目の出っ張りが取り付けられています。今は携帯電話の通話スペースと言った感じですね。
かつて公衆電話が設置されていた場所は、体の良い携帯電話の通話スペースとなっております。
車内です。まずは普通車から参りましょう。JR四国初の特急型車両の割にはえらくサッパリ…というか地味に仕上がっています(笑) この辺りは元々特急列車ではなく急行列車をルーツとして来た四国の速達列車群、機能優先の急行型車両の流れを汲んだと言えるでしょうか。
デッキとの仕切りです。扉は自動化され、その上にはLED表示機が設置されています。
天井です。こちらも非常にアッサリ、必要最低限以外何も無し。手前のボードは指定席の区域を示すもので、1列車につき半室分でも何とかなっちゃうJR四国の悲しい性…。
普通車の座席です。肘掛周りにキハ185系のような国鉄っぽさを残しているものの、背面のバックシェルなどに四国のオリジナリティを見出すことが出来ます。座り心地は程よい柔らかさです。画像は指定席で、ヘッドレストリネンが青色となっています。四国の特急車両の特徴として、バーレストが設置されていることがあげられます。時々体勢を変えたくなった時にいいですね。
さて、外観ですごいことになっていたアンパンマン列車、中にもアンパンマンが溢れる結果となっています。しかも連結されているのは半室グリーン車の普通席側、グリーン席利用者はトイレに行くときなどは必ずここを通らねばなりません。
グリーン席との仕切りです。仕切り扉自体はグリーン席側に合わせられているため、左の通路側席はちょっとかわいそうですね。
座席です。バックシェルをやめているため、リニューアル車と同じ形態となっていますね、アンパンマンが溢れていること以外…。背面、窓下、シートバックテーブルを展開した背面にまで至るところに…。
こちらは一昔前、登場当初の座席です。腰掛けてヘッドレストに目をやると、なんとクッションがアンパンマンキャラクターになっているではありませんか。子供連れの家族にはウケが良さそうですが、当日乗車したのは宇和島直通の「しおかぜ21号」で、ここに乗車していたのはいずれも大人の方でした。ええ、とてもシュールでしたよ(^^;; オマケに、車内アナウンスの前に流れるメロディーまでアンパンマンマーチであり、時たまアンパンマンがしゃべることもあります。また車掌の検札時に押されるスタンプにまでアンパンマンは出没します。もう軽く鬱が入りそうなくらいアンパンマン漬けになることが出来ます(殴)
さて、そんな戦慄の(?)アンパンマンシート区画を抜けると、グリーン車となります。丸々1両でないところに、JR四国のグリーンの利用率の低さが見て取れます・・。
グリーン車内です。大型の座席が1+2列配置で並びます。
天井です。こちらは普通車と大差ありません。この辺りを見ても、多少の需要を考慮して「とりあえず設定しました」感がぬぐえません。
最前面の仕切りです。2000系はグリーン先頭車でありながら運転台側にも出入り口があります。普通、グリーン車は通り抜け防止を考慮して運転台側には出入り口は設置しないのですが・・。仕切り扉は自動扉ですが、パワフルエンジンの振動に負けているのか、走行中は絶えずカタカタ鳴っています。静粛を提供してしかるべきグリーン席においてこれは×。そして、一応前面展望用に仕切り窓がはめ込まれていますが、前面まではかなり遠く感じました。せっかくの流線型パノラマタイプの前面も魅力半減と言ったところでしょうか。外から見る分にはカッコいいんですけどね。ただ、それでも高知行き「南風」で最前面に座っていると、カーブに向かって加速しながら突っ込み、四国山地を持ち前の振り子をぐりんぐりん利かせながら力強く走る様は非常にアグレッシブでかっこよかったです。
座席です。非常に大きい座席でして、普通席と同様、バックシェルを持っています。これ、清掃などのメンテナンスが大変そうですねぇ・・。
付帯設備はシートバックテーブルとフットレストで、フットレストは土足面と土足禁止面の両方が使えます。ただ、座席によってはロクなメンテを受けていないのか、レバーを踏んでも降りて来ない座席も存在しました。私はハッピーバースデーきっぷで利用した身なので文句言えたモノではありませんが、エクストラチャージが必要なクラスとして、設備面を完璧なものにしておくことは当たり前のことだと思います。
こちら、窓側座席の背ズリ両端のモケット色が微妙に異なっています。モケットの劣化状況により交換しているのかは分かりませんが、なぜでしょうね?
1人掛けです。窓側には配管が通っていますが、気動車なので仕方ないところはあります。
この座席、2人掛けも共通していることですが、かなり軽量化が図られているようで、その影響なのかたまにストッパーがグラついている座席が見られます。やはりメンテが追いついていませんね・・。
全展開の図。座り心地そのものはさすがグリーン車と言ったところで、岡山から愛媛県の宇和島や高知県の宿毛まで4時間半~5時間乗り通しても疲労を感じさせない、「もうしばらく乗っていたい」と思うことが出来る座席です。ただ、前述のようにメンテがアレなのが少し残念・・。この座席、画像でも分かるとおり、腰部分が盛り上がっている形状になっており、フルリクライニング時ではエビ反りになってしまいます。ですので、リクライニングしないか、少しだけリクライニングを利かせて座るのがベストと言えます。
デッキ仕切り際の座席は固定テーブルが設置されています。フットレストも忘れず完備。
一度、岡山から宿毛まで5時間ほどを乗り通してみたいものですね。