定期運転する夜行列車がサンライズ瀬戸・出雲のみになってしまい、鉄道ファンのみならず夜行列車に懐かしさや憧れを持つ人が多くなったように思います。歴史は繰り返すか、SL牽引列車が観光列車として復活したように、JR西日本で夜行列車にも運用可能な車両が登場しました。
「WEST EXPRESS 銀河」、車体の塗装はブルートレインを思わせる濃紺色で、各所にこのようなロゴが入ります。「銀河」と言えば、東京-大阪間を結んだ寝台急行列車をイメージする方も多いでしょうね。
車両は製造から40年が経過した117系を大改造したもので、新造車でない辺りテストケースとして出してみた感があります。そうそう、両先頭車は117系としては初となるグリーン車、クロへ変更されています。また運用は同系列初となる特急となります。これに関する系列の変更はされていません。
2020年9月より運転を開始し、春と夏は山陰へ、秋と冬は山陽方面への臨時特急として走ります。季節により行き先が違うのは、山陰方面の降雪でダイヤを乱さないようにするためなんでしょうね。私、実は上りの一番列車に補欠で乗車する権利を頂きました。乗車一週間前に連絡が来たので大いにびっくりしましたが、何とか乗車出来ました。この記事は、その時の模様となります。
それでは、今回は普通車の各座席と、フリースペースについてご紹介。まずはドアですが、両開き式はそのままに、黒い化粧板に貼り替えています。そして、ドアチャイムも追加されましたがなぜかJR東海仕様…キハ120形の体質改善工事車もそうですが、なぜ突然JR東海仕様のドアチャイムになったのでしょうか…?
ドア上には各車の案内が表示されています。
117系では初めて開閉ボタンが搭載されました。117系と言えば、湖西線あたりで未だに手でガラガラやるのがイメージなだけに、ちょっと斬新。
ドア横に設置された仕切りにはくずもの入れと非常用のドアコックがあります。この車両はこのような仕切りこそありますが、仕切り扉は有りません。そのための半自動ドアなんでしょうね。
3号車の車端部です。こちらはフリースペース、「明星」となっています。明星、大阪-熊本間を結んでいた寝台特急の名称ですね。
飛沫を防ぐため、テーブルにはヘッドマークデザインを取り入れたパーティションが設置されています。また飾り照明も中央に配置されています。
夜間だとこんな感じ。そうそう、「マスク」や「距離」など、他にもヘッドマークをベースにした呼びかけがされています。アルコール消毒液も置かれていますね。
カウンター席にも「瀬戸」のヘッドマークを模した距離のデザイン。一応、座れなくはないです。
ドア横の仕切りをもう一度。この仕切りは、非常通話装置や荷物置き場も兼ねています。
いよいよ今回乗車した普通車指定席の車内ですが、4列シートが並びます。なお2号車は女性専用で、3号車の青系モケットに対して赤系モケットとなっています。
セミコンパートメントへ続く通路への仕切りです。鏡面仕上げの円盤を組み合わせた飾りがあります。
天井です。カバー付きの蛍光灯は間接照明になり、ややもすると薄暗さも感じます。ただこれ、夜行運転では朝の照明点灯という点では不快感が少なく済みます。荷棚はパイプ式、オリジナルではないはずですが近郊型時代を忠実に再現しています‥というのもありますが、間接照明にしてなるべく明るくしようと考えると、これが一番手っ取り早かったのもあるかもしれません。
窓です。種車は0番台、田の字窓から特急用車両らしく固定窓になっています。ただ、フレームというか柱自体は流用してるんじゃないですかね?というのも、窓割りが合ってるのか合ってないのか微妙なんです‥。 日除けは横引き式で、夜行運用を想定してか厚手のものになっています。
座席です。シートピッチを広くとったリクライニングシートが並びます。ベースとなるのは683系4000番台からの座席となりそうです。最近登場したこの手のリクライニングシートにはコンセントが付く代わりにサイドアームテーブルが無くなっていたのですが、コンセントの位置をずらして両方を備えるように改められています。個人的に、今までの座席もこの配置はやろうと思えばやれたよね?とは思っています(笑)
ヘッドレストのサイドはN700Aのように張り出した形状で、更に木で出来た座席番号表示を兼ねたプレートも付いています。頭を預けられるように、という他、プライバシー性も少し考慮したと思料します。座面はコシ弱めで着座位置がちょっと判然としないタイプです(JR東日本のHB-E300系に近いか)。寝ることを前提とした夜行運転では寝返りを考えると分からない選択では無いですが、通常の「座る」という行為を考えると、お尻の落とし所が分かるバケット形状の方がいいように思います。一方で背ズリはやや硬めです。あと出来れば靴が脱げるようにフットレストの類が欲しかったですが、普通車指定席という座席ランクに泣かされたと思っておきましょう。
ヘッドレストリネンは銀河専用のものを使用しています。そうそうこの車両はM車、フリースペース「明星」とは仕切り扉は無いものの、MT54のモーター音はそこまで気になるほどでは有りませんでした。「明星」はそれなりですが(笑) それより、出雲市発大阪行きでは山陽本線大久保駅で3時間程運転停車をしますが、冷房の音の方がよっぽど耳障りと言えます。そういう意味では、走行中のMT54のモーター音やジョイント音がちょうど(?)打ち消してくれていたんじゃないかなぁと思います。なんせその大久保駅での大バカ停でしか寝てないんですよ、今回(笑)
夜行運転では天井の照明は完全に落とされますが、座席客台のフットライトは常時点灯となります。こうすることで、消灯時の通行の安全を確保しています。
消灯後は、こんな感じ。床面にはカーペットが敷かれており、歩行時の騒音軽減を図っています。それにしても、模様が京阪っぽいですね(笑)
テーブルは一部折り畳み可能な固定式です。折り畳み可能部はカマボコ型、デザイン性はともかく実用性にはちょっと疑問符。
壁面には各種ステッカーがあります。フリーWi-Fiも飛んでいますが、もちろん山間では途切れることもあります。
そして3号車のもう半分程、1編成に2席設定されているセミコンパートメントの「ファミリーキャビン」です(現時点の空室時に撮影)。完全な壁では有りませんが、通路側からは見えないように仕切りが入っています。よって騒ぐと騒音は筒抜けですのでご注意の程。なおこの座席は3~4名での利用となります。
土足禁止のフローリングタイプで、ベンチシートが置かれています。座面とも言えるマットは折り畳みされており、これを広げることで簡易ベッドとして利用も可能です。ちなみに土間付近には仕切りのカーテンが有ります。
続いては5号車です。デッキ(‥と言って良いのか)はかなり広めに取られています。
ドアは2号車と大きく変わりません。握り棒は緩く湾曲しており、開口部を無視するようにはみ出しています(笑)
トイレです。ここはバリアフリー対応の大型タイプを備えています。そうそう、各車にはLCDディスプレイが有ります。表示方法は、35系4000番台の血を感じます。
向かい側に洗面台があります。横の窓は丸窓、遊び心ですね。
客室側をみて一枚。
隅にはちょっとした腰掛けがあります。ここでお酒をゆっくり…というのも有りですね。間違っても寝ぼけてテーブル上の違う意味のアルコールを飲まないようにしましょう(笑)
車内です。…もう、これはかつての開放式B寝台です。いやはや懐かしい光景をよく再現しています。
というわけで、座席です(現時点の空室時に撮影)。「座席」と書いたのはこの席が普通車指定席、ノビノビ座席「クシェット」として販売されているためでございます。最近「B寝台料金」というのが消滅しましたし、この列車のコンセプトが手軽に乗れる長距離列車ということもあるからなんでしょうね。
しかしながら設備は完全にB寝台、クッションやシーツが無いのがノビノビ座席らしいですが、東京から青森を結んだ寝台特急、「あけぼの」号に連結されていた“ゴロンとシート”に通ずるものがあります。なお2号車の女性用車両にもクシェットが有り、リクライニングシートと同じく赤系のモケットです。
天井です。間接照明は座席車と同じですが、直接照明がひとつだけあります。
クシェットを見てみましょう。クシェットとは“簡易寝台”のフランス語です。元々が通勤電車だけあり高さが取れないため、下段はかなり低くなっています。上体を起こした体勢での居住性を高める一方で、座席としては向かないので語らいは5号車のフリースペース、「遊星」に行ってね、ということらしいです。
向かい側です。各席にはコンセント、小物入れ、照明が有ります。小物入れには倉敷帆布という製品を使用しています。各席には仕切りのカーテンが有りますが、窓の日除けを下げないと目隠しにはならない程薄い上、全て隠せる訳ではありません。
こちらはバリアフリー対応の2人席区画です。車椅子からの乗り移りを考慮し、簡易寝台は二段式ではなくカシオペアツインのようにL字形に配置されています。また座席の高さもやや高めになっています。
この区画については、カーテンは通路側で仕切るようになっています。こう見ても薄さが分かりますね(笑) ちなみにここを利用されている方が閉めたものですので為念。
夜間はこんな感じ。通路側の日除けを降ろす方もいらっしゃいました。
お次は4号車、フリースペースの「遊星」です。ここは夜行運用でも常時照明が点いており、ドンチャン騒ぎドンと来いな車両です。
ドアです。こちらは化粧板が明るい色になっています。
車端部です。トイレが備えられています。
男女共用トイレです。最近流行りの洗浄機能付き温便座となっています。
男性小用トイレです。まぁ…広くありません。
洗面台です。蛇口は自動式、温かいお湯が出ます。また液体石鹸が横に備えられています。鏡はJR西日本伝統とも言える照明を仕込んだもので、円を縦列配置したものとなっています。
AEDです。何かあった時はここにあります。
反対側の車端部です。車両の仕切り扉は自動化されていますが、ステンレス仕上げです。この辺りは十の位が「1」だからなんですかね?(笑)
窓には別のフリースペースへの案内もあります。
天井です。中央の化粧板は木目となっております。またダウンライトも設置し、他の車両と比べて明るい空間にしています。
窓です。こちらも固定式です。そうそう、いくつか立ち席でも飲食が出来るようにテーブルが付いています。
ドア付近にある立ち席のカウンターです。「明星」と同じく、パーティションが置かれています。「遊星」のデザインは、この列車の名前のルーツとなる寝台急行「銀河」のオマージュですね。なお、ツアー商品として運転されている間は旅行会社さんの拠点となっており、ここでお弁当の受け渡しがされます。お休みの隙を狙い、一枚。
その横にはVRによる星空体験が出来ます。車内放送では特にPRされている感じはありませんでしたが(ちゃんと聞いてなかったか…?)、添乗員さんや巡回してきた車掌さんからは勧められました。
車体中央付近にあるベンチです。簡単なテーブルもあるので、座席に飽きてからお酒をここで呑むなど、ちょっとした時間を過ごすにはちょうどいいでしょう。やや小さいですが座布団もあり、靴を脱いで小振りなテーブルを囲むのもまた使い方のひとつですね。
窓側にはコンセントがあります。ただし数は少ないですのでご留意の程。
続いて車端部のボックスシートです。フリースペースでは、ここが中々人気の区画となります。
ボックスシートは4人掛け、シートピッチは広く中央には固定式のテーブルが付きます。
ここにもパーティションがあります。
ここもかつて走った寝台列車のヘッドマークをベースにしたデザインです。これ、使うとかいう訳でなく家に欲しいですね…
窓側にはコンセントが二口あります。なおパーティションは可動式、少しずらして使うことになりそうです。
テーブルには、ゲームのボードが刻まれています。囲碁、オセロ、チェス、将棋と言ったところでしょうか。駒はセットされていませんが、添乗員さんか乗務員さんに声かけすれば借りられるようです。持ってくるのもアリですね。…今はパーティションがあるので、めっちゃゲームしにくいですね(笑)
こちらの窓にも日除けが有ります。ビックリしたのは、このボックスシートに座席番号が振られていること。場合によっては、ここも指定席に宛がう目論見があるんでしょうか…
車端部やボックスシート裏の化粧板には、SL列車や国鉄型特急など、かつて日本を支えた列車がプリントされています。
LCDディスプレイです。型は丸くなっていますが、ディスプレイ自体は四角形です。
表示パターンはこんな感じです。
最後は6号車です。ここはグリーン個室、「プレミアルーム」です‥が、今回はフリースペースのみご紹介。グリーン車・グリーン個室‥乗車出来るのはいつの日か。なお、グリーン個室なので本来グリーン個室券を持たざる者の立ち入りは禁止されるべきですが、最前面のフリースペース、彗星へのアクセスのために立ち入りが可能となります。
仕切りがこちらです。柄が異なる程度の差ですね。
通路はこんな感じ。2人用個室が4席、1人用個室が1室という争奪戦必至の座席となります。
通路を進んでいくと、フリースペース「彗星」にたどり着きます。こちらの英語は「ラウンジスペース」と記載されています。
フリースペース「彗星」です。「遊星」と同じくちょっとしたベンチと立ち席用のテーブルやドリンクスタンドがあります。
仕切り扉は開き戸のままですが、窓が下まで拡大されています。ただ前面窓は従来のままの大きさなので、前面展望という訳にはいきません。
ベンチです。座布団は二つ置かれています。またハイデッキ化されており、先述の通り前面窓が高めながら座りながらでも多少は前面展望が出来るようにしています。
ドリンクスタンドです。4本分が二つ備わっています。
さて、2号車と1号車はそれぞれ女性用車両とグリーン車となります。この2両については、各車両の指定席券を持ってないと入れません。2号車はともかく、1号車に乗れる日はいつの日か‥。それもそうですが、上りは車掌さんが1号車にいるんですよね。何かあった時にこの2両を通過しないといけないのもどうなのか…とマジメな一言付けときます。そうでなくても、1号車の男性客が2号車を通過するのはちょっと気が引けますよね。
松江駅にて、ドアが開いていたのでグリーン車専用ラウンジです。高い背ズリの回転ソファが置かれています。