函館市電のレトロ電車と言えばやはり「箱館ハイカラ號」が代名詞ですが、中々どうしてこの車両も目が離せません。
500形、昭和20年代に登場した戦後初の新造車両として30両が製造されましたが、現在は501号とこの530号が残るのみとなっています。
特徴はこの大きな車番表記ですね。窓の桟は木で出来ており、レトロ感が出る要素のひとつとなっています。
そして車輪はスポーク車輪、今時の車両としては珍しいですね。
501号車はもっぱらイベント列車で使用されており、530号車は多客時の臨時列車に使われることが多いのですが、冬場は構造上空転しにくいため線路に入り込んだ雪を取り除くためにこのように通常運用にも使われます。これに乗るべく函館市内をうろちょろしていましたが、狙って乗りたい方もいるようですね。
車内です。アイスグリーンの塗装、紺色の座席、随所に使われた「機能美」としての木材、実にノスタルジックです。
ドアです。引き戸式で、近年では珍しい塗りドアです。もちろん足元にはステップがありますので、乗り降りには多少の不便が生じます。
こんなレトロな電車でも、交通系ICカードに対応しています。なぜか北海道なのにnimoca、しかもそんなにイカを推したかったのかICAS nimoca…
出口のドアは二枚式、折り畳み式の骨がメカメカしくていいですね、ええ、語彙力が足りません(笑)
運転台です。車体長を長く取りつつ急曲線の通過を可能とするため、前面へ至るほど幅が狭くなっています。運転席との仕切りは簡易な広告板のみ、左側も運賃箱で区切られており、出入りは右側の通路からとなります。
一応、運賃表示機はLCDディスプレイ化されています。浮いてると言えばそうですね(^^;;
なお方向幕は手動式、サンバイザーの右側にある回転レバーがそれになります。
片隅に見つけたメーカーズプレート。右書きですね。
天井です。節電のため消灯していましたが、蛍光灯がまばらに設置されています。特筆すべきはやはり吊革、細いアルミフレームで出来ており、冷たさを和らげるためFRPのカバーが握る部分に付けられています。これが通常の吊革よりも軽いものですから、カーブや振動では尋常じゃないくらい大きく振れるんですよね(^^;;
窓です。この車両のクラシカルさを最大限引き出すアイテムのひとつで、変にアイスグリーンに塗装しなかったのはグッジョブです(笑) 降車ボタンも近年のものとは異なる押す面積が小さいものを継続して使用しています。
そうそう、中にはもっとシンプルな降車ボタンも存在していまして、こちらはずばりボタンだけです。一応、こちらを押してもしっかりと反応はしていました。
で、元々片側3扉車として製造されたこの車両ですが、出口向かい側のドアは閉鎖されています。ただ二枚扉の面影は残されており、「元々ドアがありました」と地味に主張しています(^^;;
更に、「軌道運輸規程」なるものが入れられています。今で言う車内での禁止事項なんですが、「運輸省」「煙草をのむ」という表記が時代を感じさせます。
座席です。紺色のモケットはJRでも見られますが、函館市電ではあまりお目にかかりません。袖仕切りは床面から背ズリまで一体となった板とパイプを組み合わせたものとなっています。
優先座席とセットになった座席です。背ズリにカバーを付けて区別していますね。座り心地…求めるものじゃありません、ちょっと座れたら満足くらいに思っておきましょう。
で、函館市電名物とも言えますが、ヒーターは灯油式です。少し張り出した床下はやや暖かいかと思います。
最後にドア跡部分です。ここまでヒーターが伸ばされているんですね…。