京都線の9300系から遅れること3年、これまで既存車の延命によりサービスアップを行ってきた神宝線にも新車投入の波が。2006年に登場した9000系です。製造は9300系に引き続き日立が担当しました。もちろんA-Trainベースです。A-Trainベースの純然たる通勤電車としては、個人的に最高傑作ではないかと思っています。9300系との違いといえば、オールロングシートの車内と、窓の大きさ、表示幕のLED化(但、9303F以降はLED車)などなど。詳しいことはまた後ほど。
8000系と並びました。上部をカバーで覆い、額縁を窓周辺のみとして後退角をつけたため印象が大幅に異なっています。
こう見ると、9300系とはほとんど違いがありません。阪急の車両に対する「線区によって差をつけない」という理念は、ここでようやく近いものになったように思います。6300系と6000系との格差ったら・・。この系列の特徴として、偶数車が神戸線、奇数車が宝塚線に配置されていることでしょうか。神戸線では伊丹・今津南・甲陽各線以外の全種別、宝塚線では特急日生エクスプレス以外の運用についています。
とは言え、神宝各線の車両需給の関係から相互に貸し出されたりもします。過去には9004Fが宝塚線で走行したり、このように9001Fが神戸線にやってきたりもします。何気に9001F、営業運転では初めての115km/h走行(笑)
グランフロント大阪開業記念ヘッドマークをつけた9000系3編成が並びました。手前から9008F普通三宮行、9000F特急新開地行、9006F特急新開地行です。なかなか同系列で、しかも同一HMを付けた編成が並ぶのも珍しいですね。いいものを撮りました。
車内です。9300系同様、ところどころA-Trainの片鱗が見え隠れしていますが、阪急の伝統を色濃く受け継いでいます。
ドアです。窓が大きく取られていて、展望性が向上しています。これは5000系リニューアル車からの流れですね。
ドア上には千鳥配置で液晶ディスプレイが設置されています。他社のような画一的なデザインではなく、外面の方向・種別表示に合わせたものになっています。右側で運行案内、左側で沿線情報などを流しています。画像は宝塚線所属車両で、ラインカラーの橙がベースカラーとして使われています。神戸線では青色ベースです。
ドア開閉点滅装置も取り付けられています。少し主張が足りていないように思うのは僕だけでしょうか。
握り棒はA-Train標準、「の」の字型のものです。9300系でも思ったことですが、他社が銀色の素材そのままで使用しているのに対して、ブロンズに塗られ高級感が出ていることは評価できると思います。しかし、いかんせん握りづらい。この形にすると目一杯の長さに伸ばすことができるため、あらゆる身長の人々が握ることができるという利点があるものの、しっかり握ることができないので今までの握り棒に慣れている乗客からすれば相当ストレスがたまる一品です。
天井です。ロングシート車なので長いつり革が9300系の倍近く設置されています。それ以外は9300系と同じですね。こちらはトップナンバーのものです。荷棚がアルミ製で穴を開けたものになっており、荷物の様子を確認できるようになっています。
そしてそれ以降の車両の天井です。荷だなは枕木方向に棒をならべたものに変更されました。
従来阪急の車両はドア上はつり革がなかったものの、この系列からは連続して設置されました。実は9000系が導入されてこれになかなかびっくりした管理人であります(^^;; 照明は引き続き間接照明です。良くも悪くも特急車として導入された9300系はともかく、通勤電車でこの照明の採用はほとんど見られません。9001Fまでは9300系と同じく、外から見ると蛍光灯本体が丸見えで返って安っぽく見えますが、9002F以降のLED車では照明が見えにくくなり、優しい光が照らします。その分車内が暗く感じるのは言っちゃだめ。
最前部です。近年の車両としては珍しく大きな窓、後部に座席が設置されています。前面展望に優れており、中央の窓は更に大きくなっています。
車端部です。上が通常の場合で左右に5人掛けのロングシートがあります。下が車椅子スペースが設置された場合です。神宝方先頭車は梅田寄り、その他は神宝寄りに設置されています。尚、この車椅子スペースがある区画は全席優先座席に指定されています。なるほど確かにバリアフリーを求める方々を集約することはできそうです。
この車両にも自動ドアは採用されています。通勤電車での採用は北大阪急行以来ではないでしょうか。取っ手横のでっぱりには赤外線センサーがあり、それを遮ることによりドアが開きます。要するに、握らなくても赤外線を遮るとドアは開きますよ、と・・
窓です。長年3枚の一段下降窓が伝統になっていましたが、この系列からは2枚固定窓となっています。ただし、車端部の1枚窓のみ少しだけ換気のために開くようになっています。左側はカーテンを降ろした状態です。上部が少し薄いのは、立ち席の人ができるだけ外の景色を見ることができるように、との配慮ですが、日差しを遮るという面では少し役不足ですね。下の部分でも眩しい時は眩しいですし・・。
座席です。この系列から方持ち式のロングシートとなりました。座席の座り方に関して、関西では割とおおらかではあったのですが、最近バケットシートにする会社も増えてきました。そんな中、阪急では定員着席を図るために3-2-3に区切られた仕切りが設置されています。一昔前の東急のロングシートってこんな感じですよね。この方法の利点としては、座り心地が既存車と変わらないところでしょうか。新車のバケット化により座り心地が著しく悪くなった、という会社は多いです。しかし阪急はもっと柔らかく仕上げています。これが新型通勤電車の王者に君臨している(と勝手に思っている)所以です。9002Fからは心なし座面が高くなり張りが強い座席になったように思いますが・・。
最前部のロングシートです。前面展望に打って付けの特等席です。
車端部の5人掛けです。良く見てみると、袖仕切りの板が既存車よりも大きめになっていますね。方持ち式に変更したことで、露出するヒーターを隠すためでしょうか。9300系同様、妻窓に関しては二重ガラスとなっており、肘を逃がすスペースがありません。既存車はしっかりスペースをとっていることを考えるとやはり改善点でしょうか。
最後に車椅子スペースです。車端部の窓はめいっぱい開いています(^^;; この窓は手動でも開きますがとてつもなく重いです。そんな方にはこれっ!エアーによる開閉スイッチがおすすめ(殴 車椅子スペースとはなっていますがそれを主張するのは窓の左上に申し訳なさそうに貼り付けられている小さな車椅子マークだけです。既存車には戸袋の壁にも大きなマークが貼られていたのですが、なぜ9000系にはついていないのでしょうか・・。
さて、7年に渡り増備されてきた9000系、こちら2013年から運用を開始した9009Fの全景です。よーく見ると、ある部分が変わっています。
変更点はドア付近です。何やら以前に比べてスッキリしたような・・。
はい、変更点はこちら、ドア横の握り棒です。以前のA-train標準、「の」の字タイプから先祖返りしています。やっぱり、あんまり評判よくなかったのですね・・。ですがこれはこれで8000系列までとは異なる形で、8000系列までのものと比べると少しぼてっとしているように思います。また、以前の「の」の字手すりはブロンズカラーに塗られていて濃い化粧板を一層引き締めていたのですが、周りが銀色になってしまい少し安っぽく見えます。こればっかりは仕方ないですね。でも実用性が戻ったことは歓迎すべきことですね。
そしてなぜか運転席の座席モケットが9300系のような色調になっています。なぜ?(笑)
如何でしたでしょうか、伝統を受け継ぎつつ新たな新機軸を取り入れ生み出された阪急9000系。いくらか改善点は存在するものの、他社の通勤電車とは比べ物にならないほど快適な移動が約束された上質な車両です。JR東や東急などに毎日乗っている関東の人に是非この通勤電車の王者に乗って頂きたいと思います。