JR九州の観光列車ブランド、デザイン&ストーリー列車の始めとも言える「ゆふいんの森」は、Ⅱ世であるキハ183系1000番台と共に2往復体制で運転されてきました。そのキハ183系を今や黒歴史となった特急「シーボルト」に転用することになったため、代替として新しい編成が投入されています。
それがキハ72系です。ゆふいんの森Ⅲ世の愛称があり、キハ71系は足周りをキハ58系から流用したものでしたが、この系列では全て新製となっており、最高速度も120km/hまで引き上げられて遅延時にそのスペックが活かされるそうな。キハ183系の後継ということもあるんでしょうね。
車体デザインはキハ71系に準じたハイデッカータイプですが、ライト類の形状変更などが図られています。
ゆふいんの森のロゴプレートも引き続き貼られていますが、行き先表示はLED表示機となっております。
ドアは窓が二分割されたものとなっています。
という訳でまずはデッキからです。ハイデッカーのため階段があるのはキハ71系と同一ですが、車両間の移動の度に階段の昇り降りが生じていたため、このようにブリッジが渡されています。
ドアです。この窓2つというデザイン自体はキハ71系から引き継がれたものですね。
ブリッジ下はスルーになっており、なぜか冷却剤の箱が潜伏乗車していました。
そのブリッジ部分です。転落防止のため半透明の板が付いた手すりが渡されています。
こちらはドアの色が異なる車両です。
そのドアです。側面と同じ色になり、「森」感は出てると思います。
ドア上には開閉ランプが設置されています。
握り棒はかなり長くなっており、あらゆる身長の方に対応しています。その横にはマガジンラックがありますが、特に何も入っていません。
製造は小倉工場…ですが最終組み立てをここで行ったということです。他のJRや私鉄でもこういうケースありますよね。
くず物入れは885系と同じもの、テーブルが上についているのも同じです。これ、例えば車内販売で購入したものでゴミが発生するようなケースがあった場合、ここに置いておけるということを想定してるんですかね?いずれにしても、縁取りが無いのはスリルでしか無いのですが‥。
公衆電話があったと思われる区画です。今は撤去され、スマホなどでの通話スペースになっています。その隣はトイレ、中は洋式ですが入口の扉は折戸タイプで中々コンパクトになっています。
向かい側には女性用トイレがあります。由布院への女性観光客も多いですからねー。なおトイレ付近の化粧板は木目調、床もフローリングとなっています。
洗面台です。謎に張り出した右側のブロックが少々目障りでしょうか。照明は九州お馴染みの飾り照明、蛇口は自動式ですがハンドソープは一体では無く据え置き式です。
入口の階段と客室との間には‥何のスペースなんでしょう、車内販売カートや荷物などを置けるような囲いがあります。
多目的室です。通常はもちろん施錠されておりますので、利用の際は車掌さんやアテンダントさんにお申し付けを。
さてさてようやく車内です。キハ71登場からかなりの時間が経過したためか、それともミトーカデザインが加わるようになったためか、キハ71から受け継いでいるのはカラーコードくらいではないかという印象です。パーツ単位で見れば、787系や883系で見覚えのあるものがチラホラと。
デッキとの仕切りです。両開き式の全面ガラスで、車内が見えないように一応は半透明です。その両側は木目調の化粧板で固めており、「ゆふいんの森」というブランドを強調しているようには見えます。LED表示機がありますが実用性に乏しい程の大きさ、「付けりゃいい」ってもんじゃないぞ、と。
最前面です。ホームページでは「前面展望でダイナミックに木々の緑を楽しめる」と書いてある最前4列は展望席扱い(※料金は他の席と同一)ですが、それにしたって前面展望を阻害するものが色々あり過ぎてですね‥。
まずは両端の柱。この中に煙突が仕込まれているかもしれませんが、これのおかげで斜め前展望しか出来ない状況となりますので、窓側席はあまりおススメ出来ません。
トンネルや夜間の走行ですと、飾り照明がいいアクセントになります。
両先頭車で柱の色が異なります。色変えればいいってもんでもなかろうに‥。
仕切り窓との空間はテーブル扱いになっております。ただもうお馴染みですが縁取りが無いので、あまりボーっとしてると久大本線のローカル軌条の影響でモノが落ちる可能性も有ります。油断は禁物です。
で、通路側席を押さえてみましたが‥キハ71でもそうだったろうに横方向の大きな梁が邪魔。耐久性云々をここで言われようとも、「展望席」で売り出すならこれなんとかするくらいの配慮は欲しいものではあります。キハ71と異なる点は、緑に溶け込ませようとしたか色が外観同様深緑になったことですね。
姿勢を下げると、まぁ前面展望ならこれでなんとかってところでしょうか。
天井です。スリットカバーの付いた照明にハットラック式の荷棚、完全に787系や883系辺りの造詣を使ったものですね。もちろん、化粧板を木目調にするというカスタマイズこそありますが、見える金属を全て金色に塗装したバブリーさを感じるキハ71とは全く志向は異なると思います。
という訳で荷棚です。下には読書灯が付いており、暗くなりがちな窓側席にも配慮したものになっています。
窓です。キハ71系と異なり1席に1枚の割り当て、日除けもフリーストップタイプのカーテンを備えています。この辺りも同世代の特急型車両と同じ構成です。
座席です。脚台は一本足となり、脚が伸ばせるようになっております。これ、窓側に配管が出っ張っている関係でちょっとでも邪魔にならないようにこうしたんですかね?また一方で、フットレストは省略されています。
登場時からはモケット、テーブルの素材、ヘッドレストリネンが交換されており、印象が変わっています。インアームテーブルはセンターアームレストに仕込まれており、向かい合わせで4面とも引き出すとひとつの大きなテーブルになるように考えられています。が、このセンターアームレストやインアームテーブルが中々クセモノです。まずテーブルですが、JR九州お得意のメンテ下手でだいたい高さはしっかり揃いませんし、板面がツルツルですので固定テーブル以上にスリリングです。そしてアームレスト、両サイドのアームレストよりも高い位置に来ており、使うとなっても脇が開いた状態となるため疲労を増幅させることになります(これはお隣が他人だった場合仕切る役割にはなりますが‥)。そしてテーブルを収納しているアームレストの蓋は一枚もののため、お隣が他人だと気を使うことになります。大きなテーブルにさせることに気を取られ過ぎてその他の使い勝手がダメダメですが、後々一部が改善されていく未来を知っていれば、「踏み台」と思っておく方がいいでしょうか。
デッキ仕切り際の座席は固定テーブルがあります。これまた、なんで通路側に行くにつれてわざわざ面積を狭めたのか‥。
荷物置き場です。885系と同じものが搭載されています。確か元々は設定されていなかったはずで、大きな荷物を持ちこむ人が多くなったので座席を潰して設置したのでしょう。そうそう、車内ではフリーWi-Fiが使用できます。
お次は3号車のキハ72 3です。車内販売のためのビュッフェがあるほか、バリアフリー対応設備もここにあります。
デッキから。ハイデッキ車両ではあるものの、車椅子の昇降装置が備わっており、車椅子の方でも利用できるようになっています。
トイレです。バリアフリー対応トイレは大型の円筒形となっております。
その横には男女共用の一般タイプが有ります。
その向かいには記念乗車証があります。昨今の事情からアテンダントさんからの手渡しではなく、自由に取っていけるようになっています。また記念スタンプもここにありますので、全てをここで済ませることが出来ます。
車内です。こちらの車両に関しては座席のモケットが異なっております。
デッキとの仕切りです。幅は特に一般車両と変わりませんね。
天井です。ボックスシート区画にパーテーションがあるためそこだけ異なる部分と言えます。
座席です。モケットが異なる以外は先程の座席と変わりません。ヘッドレストリネンは885系に新たに設置されたものと同じもので、共通仕様にしてコストダウンを図っているようです。早くも反り返っているものがあり見苦しい…。
座席の座り心地自体はクッションがやや柔らかめ、取り立てて悪いものではありません。博多から由布院までは2時間程度、別府まで乗り通せば3時間程度、長時間にはなりますが耐えられなくはありません。
バリアフリー対応座席です。1人掛けで、通常は発券ブロックがかかっているためかその旨を伝える札がかかっています。「ゆふいんの森」は全車指定席、わざわざ札をかける必要性も薄いと思いますが‥。
という訳でリクライニングの図。視覚上の問題か、一般座席より深く倒れているように見えます。
この号車にのみ設定されているボックスシート席です。3人以上で利用可能な区画で、4区画が設定されています。
ビュッフェとの仕切りです。出口が反対である旨が表示されています。
座席です。センターアームレストが一般的なものになっております。座席背面にはガラスの仕切りが入っています。
このボックスシートに関しては少しだけではありますがリクライニングが可能です。これ、後ろのパーテーションはリクライニング戦争を避けるためのものなんですかね。
中央にはテーブルがあります。窓側の飾り照明がミトーカデザインの特徴のひとつですね。
折り畳み式ですので、展開も可能です。‥というより、展開しないと使えないくらいではあります。
お次はビュッフェです。他社でいうところの車内販売コーナーと大きくは変わりませんが、向かい側にミニテーブルがあって空いていればここで過ごせるというのがカフェテリアたる所以なのでしょう。
窓は非常に大きく取られており、久大本線の自然を思う存分楽しめます。柱には定番の飾り照明があります。
隅にはディスプレイ。そうそう、握り棒は金色塗装とされています。キハ71のDNAここにあり、と言ったところでしょうか。
最後は2015年に増備された4号車です。車体は近畿車輛製で、ここ最近製造された車両としては極めて珍しい0扉車で登場しております。座席数を優先したかそうなったようですが、折返し時間が短い中で乗降時間が増えてそうです。
車内です。ええ、16年も経てば志向も変わるというもので、一気に最近のミトーカデザインになりました。
フリースペースとの仕切りです。白系の化粧板で、ツヤが出てるのでぼんやりと自分の姿が…。仕切り扉が両開きなのは従来車に合わせた格好ですが、ペイントされている柄は異なります。
そして反対側。こちらには荷物置き場が両側に設置されています。それにしても、なんでこんなにLED表示機は相変わらずちっちゃいんでしょうねぇ…?
天井です。森を思わせる化粧板やハットラック式をやめた木の荷棚など、「ゆふいんの森」をイメージさせるパーツを多く用いている…とかポジティブなことを書いとけばいいのかもしれませんが、見覚えのあるパーツ使い回しというところもお馴染みだという小言も付け加えておきましょう。照明に関して言えば、ダウンライトとは言え等間隔に照明を配置していたキハ71スタイルに少しだけ先祖帰りしたという偶然…。
窓です。他の車両と同じく1席に1枚の割り当てです。えらいと思ったのは、他車に合わせて読書灯を付けており、格差を付けていない点ですね。この配慮、他社にもあってもいいとおもうんですが…。
座席です。最近のJR九州特急型リクライニングシートと言えば、感な定番のフレームのものが並びます。そう言えば、16年も経てば窓側足元の配管は何とかなりそうなものですが、結局そのまま残されているみたいですね。
比較として、885系の座席と並べてどうぞ。フレーム自体は同じですが、モケットはもちろんのこと、肘掛けは木を多用したパーツになり、背面にはドリンクホルダーが追加されています。センターアームレストにテーブルを仕込む方式は既存車から引き継いでいるものの、両サイドの肘掛けと使用感を合わせたのは進歩というかあるべきところに戻りましたが、そのテーブルがやはり形状故使い勝手が悪く、座席自体も扁平でクッション薄めな座面はもうちょい何とかならんかとは思います。日除けはミトーカデザインお馴染みの簾製フリーストップカーテン、今のところしっかりメンテされているようです。
サイドアームレストにはアルファベットで列車名が刻印されています。側面にもロゴが入ってますね。
荷物置き場です。二段式で、固定用のベルトもあるようです。くどいですが、固定テーブルの通路側、これを飲み物置く以外にどうやって使えと?
最後はフリースペースです。ここはサニタリースペースも兼ねていまして、中々の面積を割いています。
フリースペースから。高さが違うカウンターテーブルが設置されています。
下段に当たるテーブル付近は、床に木の枠、テーブル下に柵とネットが設置されています。荷物置き場がいっぱいになると、ここが荷物置き場になるのでしょう。
トイレです。男女別になっており、構成自体は885系と同じです。ただ配置は両方並ぶ形になっていますね。
洗面台です。それなりの幅があり、余裕があります。鏡に照明が仕込まれており、上にもお馴染みの飾り照明が設置されています。
さて、ここからは車内サービスを少し。乗客全員に、ゆふいんの森オリジナルラベルのキャンディが配られます。オリジナルラベルを用いているのは、今はこの列車だけですかね。
ビュッフェにてコーヒーとドーナツを購入しました。景色が美しいのは久大本線、駅で買ったコーヒーなんてそこまで持ちませんから、やはり車内販売に限ります。
折り返し便では、かぼすこしょう鶏の炭火焼きと、ゆふいん麦酒 地ビールを。前面展望しながらのお酒とアテ、よきではないですか。なお地鶏はレンチンしてあり、温かい状態でいただけます。
乗車記念撮影ボードです。乗車年月日入りですね。
豊後森駅で、キハ71系ゆふいんの森Ⅰ世と交換です。
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