筑紫平野をとことこ走る第三セクター、甘木鉄道。かつては国鉄甘木線でしたが赤字路線の指定を受けて廃止され、甘木鉄道がその受け皿となった形です。3セク転換後は駅の増設やダイヤの改善を行った結果乗客増加に繋がっており、3セクの中では優等生の部類に入るようです。
中にはキハ20形風塗装の車両もいます。ちなみに、この甘木線が開通する前、付近には朝倉軌道という軽便鉄道が存在しており、無認可での車両改造・製造は当たり前、届け出られた設計図も極めて適当で実態と乖離した代物、これだけの諸行が祟ったのか当時の鉄道省担当者が心臓発作を起こして死亡、モータリゼーションと甘木線建設による廃止を迫られた際に補償金をせしめて路線廃止した結果、合理化を徹底していたために最後まで黒字かつ無借金で幕を閉じた伝説の鉄道会社だったそうです。とにかくここに書き切れない程の伝説が数多く存在しますので、気になる方はWebで。
さて、それはさておき車内です。典型的な地方ローカル線レールバスのパッケージで、乗車時間も長くないためかトイレは有りません。
ドアです。無塗装ステンレス仕上げの一枚引き戸で、国鉄時代からの低床ホームに対応するためステップが付いています。そのステップも、乗り降りの便を考慮して二段式となっています。
運転台です。半室構造で、向かい側は客室として開放されています。この構造も地方のディーゼルカーではお馴染みです。
天井です。照明はカバーの無い蛍光灯で、節電のために一部が抜き去られています。直接的に電気を使用しない気動車、燃費節約には役立つでしょうが電力消費量には直結しないのでは…? 吊革はロングシート上にのみ設置されています。
窓です、二段窓で、日除けは横引き式のカーテンとなっています。あえてロールカーテンとしないのは巻き取りスペースの問題でしょうか?
座席です。まずは車内中程のクロスシートから。
北海道から九州まで全国どこでも見ることが出来る、国鉄型ボックスシートに次ぐベストセラー品のフレームを採用しています。
向かい側には1列2人組のボックスシートもあります。テーブルの類が無いのが少し寂しい気もしますが、まぁ必要無いと言えばその通り。
ベストセラー品だからと言って座り心地がいいかと聞かれれば穏やかに「No」でして、クッションにコシがないため着席位置が安定せず、反対側に座っている人が少しでも動くとその揺れがこちらにも伝わります。この座席でそれが一番のストレスなんですよね…。背ズリも見た目以上に直角です。側面の見せかけの角度に騙されてはいけません。まぁ、この系列の最終増備車両のボックスシートは223系2000番台の固定式クロスシートを直角にぶっ立てたようなもんなので、それに比べれば遥かにマシと言ったもんです。
続いてロングシートです。8人掛けで、穏やかにバケット形状となっています。こちらもクッションは柔らか目、背ズリもほぼ直角にぶっ立てていますが、ちょい乗りが多い甘木鉄道ではこれくらいでも特段問題ありません。
車椅子スペースです。見事に壁です。いくら何でもかわいそうでないかい? 付帯設備としては握り棒と固定用ベルト、ステップを越えるための渡り板があります。
最後に肩部から天井にかけての化粧板です。丸を敷き詰めた模様となっているのが、今はなき富士重工のLE-DCの特徴ですね。
↧
甘木鉄道AR300形
↧