ここは日本最大級の鉄道の博物館、「京都鉄道博物館」。ここのメイン展示部分に、JR西日本で最も人気であろう500系新幹線を差し置いてセンターを張っている車両がいます。世界初の本格的な電車寝台車両、581系です。
高度経済成長時代は昼夜問わず特急として走り続けましたが、特殊な構造で重量が重く線路に負担がかかること、新幹線の延伸により用途が無くなってしまったため多くの編成が廃車、一部はその特殊な構造をほぼそのまんまに普通列車にまで転用する暴挙に出る始末でしたが、あれもビックリ2010年代まで現役でした。
星2つ、三段寝台を意味します。
昔撮ってないかなー、と思ってアルバムを探せば、ありましたありました。撮影は恐らく中学生の時、ヘッタクソですねぇ(苦笑) 最後の定期運行は大阪-新潟間を結んだ急行「きたぐに」で、JR西日本リニューアル色に塗られていました。この車両の構造を生かしてA寝台、B寝台、グリーン車、普通車自由席と「客車列車か」と言うほどのバラエティを電車で実現していたのでした。現在この車両も西日本では保存車1両を除いて全て姿を消しました。
さて、今回の車内観察は当ブログ開始から初となる保存車からのご紹介です。通常車内は非公開となっているのですが、8月の土休日限定でこの581系の車内が公開となったため行って参りました。まずはデッキドアから、基本的に全車指定席・寝台の定員利用を想定しているため、ドアは折戸式となっていました。
くずもの入れです。基本的に引退時のままで、表記も国鉄のそれよりシンプルになっています。
乗務員室へと続く通路です。この時は運転台は公開されていませんでした。
トイレです。長距離を走る寝台列車らしく2箇所設置されていました。中はどちらも和式です。
洗面台です。こちらも2箇所設置となっています。就寝前の歯磨きや起床後の洗面、みんなやることは決まって同じで混雑するんですよねぇ。
向きを変えて。こちらはサッパリリニューアルされており、蛇口は自動式で液体石鹸も備わっていました。
いよいよ車内です。昼は座席、夜は寝台に組み換えることが出来るよく言えば昼夜兼用車両、悪く言えば鉄道版社畜(殴)の画期的な構造を有しています。以前タモリ倶楽部でもこの車内に潜入していましたが、その時とは組み立て配置が変わっていますね。
デッキとの仕切りです。座席モードの区画を見てみるとよく分かる建築限界いっぱいの天井の高さがポイントです。うん、そりゃあこれをスッパリやれば「食パン」とも言われますわな(笑)
壁にはデジタル式の温度計が備わります。
なお扉はスコープ付きのもので、結構重かった記憶があります。静粛性が求められる寝台列車、簡単に開いてもらっては困りますよね。
天井です。寝台用の仕切りが入ったままとなっているため実感しにくいですが、座席モード時の天井の高さは広々とした、というよりガランとしてると言った方がいいかもしれません。冷房は小型の分散式のものが多数設置され、照明は寝台モードでの利用を考慮して通路に幅広のカバーが掛けられたものが1列配置されています。
座席です。昼間利用時は座席モードで運用に入っていたわけですが、この時でも485系では簡易リクライニングシート、最悪でも回転クロスシートが搭載されていた中、このボックスシートで特急料金を取れていたのです。晩年はさすがに定期昼行特急運用に入りませんでしたが、JR西日本では突発的に特急「雷鳥」に入ったこともあるそうで…。とは言え、寝台組み換えの必要性からシートピッチが広いので、ボックスシートとしてはかなりレベルが高いものであったのは確かです。
窓側には壁を凹ませて作った肘掛があります。テーブルは急行型のそれに近いですね。灰皿もありますが、「きたぐに」運用時は禁煙となっていました。
通路側は肘掛がかなり小さめでよろしいとは言えません。通路側には新幹線0系のように回転式のミニテーブルが設置されており、普段はこのように収納してセットされています。
そして、入り口両側1区画をセットした寝台モードです。
寝台は3段式、下段は中・上段よりも若干広いため値段も1,000円ほど高めとなっていました。下段でカプセルホテルと同じくらい、中・上段はそれよりも狭いのでそれはもう「寝られればよい」と言ったものです。
梯子です。中段部分は乗り移りを考慮してやや狭くなっています。
中段部分です。側面に小さなテーブルと覗き窓、上段寝台に当たる天井に寝台灯が備わります。覗き窓は構造上ご覧の高い位置にしか設置出来なかったため、寝ながらではただでさえ小さい景色を楽しむことは出来ません。
上段です。手を精一杯伸ばして撮影しましたがこれが限界です…。実際占有面積は中段より少ないのかもしれませんが、天井が湾曲している分圧迫感は少ないです。で、中・上段はその高さ方向の低さから朝になると天井に頭をぶつける音がそこかしこから聞こえてくるのが風物詩でした。私は「きたぐに」時代にA寝台上段、B寝台上段、自由席と利用しましたが、母はB寝台にて起きた時に頭をぶつけ、私は着替えている時に腰を金具にぶつたことを今も覚えています。今となってはいい思い出ですね。
デッキとの仕切りとの間には梯子置き場と寝具置き場があります。
博物館に安住の地を得た581系、JR西日本では117系を改造して安価で楽しむことが出来る夜行列車の開発が発表されていますが、1編成に多くの座席クラスを提供する予定で、改造故の多さなのですが、その姿はこの581系を使用した「きたぐに」をほうふつとさせます。出来れば、このようなマルチに活躍できる長距離列車が続々出てくることを期待しています。