日本でも各地で超低床車両が普及しつつありますが、長年ハイデッキ車両で来た国なだけあって、完全主力化はまだまだ道半ばです。そんな中、長崎市街地の大切な足・長崎電気軌道に2022年、世界初の新機軸を取り入れた車両が登場しました。それが6000形です。長崎電気軌道の車両位置情報提供サービス「ドコネ」でも、形式単位で位置情報が提供されています。
という訳で車内です。この車両の世界初とは「オールロングシートのノンステップ車両」ということです。確かに、超低床車両はこれまでノンステップ車は構造上セミクロスシートになるか、オールロングシートでも台車のある部分がハイデッキになっていたりしていたので、路面電車の歴史においてターニングポイントとなる車両とも言えるでしょうね。
ドアです。こちらは入口で、片開き式の引き戸となっています。白の化粧板に大きな窓…なのですが、下部にはステッカーがペタッと。近年長崎電気軌道では床面に緑色の矢印が追加されていますが、この車両は運用開始時から矢印が入っています。要は、入り口付近で固まるなと。
出口のドアは近年の路面電車では珍しい折戸式です。窓を寄せることで引き戸と同じデザインに見えるようにしています。
運転台です。仕切りを少し右に寄せて、出口への通路幅を確保しています。その仕切りの上にはLCDディスプレイ、次駅案内などを流しています。
天井です。照明はカバー付きのLED灯、さらに冷房吹き出し口も黒かつ細く作られており、全体的にスッキリしたように見えます。吊革のバンドが黒になったのもシャキッと引き締めたように見えますね。その吊革は一部バンドが長めに設定されています。
窓です。やや色味がかったガラスになっていますが、加えて日除けも忘れず設置されています。二段式で、上段は横引き式で開閉可能となっています。
さて、世界初のノンステップオールロングシート車となった座席です。これまで完全ステップレス化出来なかったのは台車に使用する輪軸が床下に通っているためでして、従来の超低床車はその部分がタイヤボックスのデッドスペースとなるため、セミハイデッキ化の上でクロスシートを搭載することで着席定員を捻り出していました。しかし、クロスシートは両側1列だと着席定員不足、2列だと座席・通路の幅がそれぞれ狭くなるというデメリットを抱えていました。そこで、この車両では(私もこんなこと書いたこと無い…笑)セミハイデッキタイプのロングシートを採用し、タイヤボックスというハンデを克服しつつ、着席定員と通路幅を稼ぐことに成功しています。しかし車軸が通る部分は緩やかに坂になっており、注意喚起のため黄色の三角形が貼られています。
それにしても、セミハイデッキロングシートは少し先進的過ぎる試みのようにも思います。まずセミハイデッキを登り降りするという動作を伴うため、お年寄りを中心に座るのに苦労しそうなこと。また地元の交通カーストでは緊急車両の次点にいるほど強い位置にいる路面電車と言えど、線路を跨いだ右折が下手くそな車起因の急制動・衝突のリスクは高いです。そうした事態で考えられるのはセミハイデッキ部からの転落、これって普通のロングシートよりもケガのリスクが高いように思います。そこへ来て背ズリが奥深くまで腰掛けるような形状になっていないので、ちょっと怖さがあります。セミハイデッキが座席形状の制限を産んだとも言えるので、何とも言えないジレンマがありますね。
座席部分には握り棒があり、両側に降車ボタンが設置されています。そうそう、セミハイデッキ部分は足を載せるためにそれなりに張り出していますので、通路幅はどう頑張っても従来のハイデッキ車両よりは狭くなります。セミハイデッキ部を無くせるようになるか、今後の技術進歩に期待ですね。
で、セミハイデッキロングシートはまだまだ青い部分があるのでまぁ致し方ないとして、問題は運転台直後のノーマルデッキのロングシート。見た目にも不自然な背ズリの高さで、恐らくセミハイデッキロングシートの背ズリの高さに合わせるため、そして窓枠下段の角に頭をぶつけないようにするためだと思うのですが、これがもう完全に駄策…。ただでさえ垂直気味な背ズリにも関わらず、更に垂直のクッションを追加していますから、体感としてはほぼ逆傾斜。背ズリに多少の傾斜を付けるなどして居住性を提供してもよかったのではないかと思います。適当にクッションを追加するのはおやめなさい。
ドア横には折り畳み式のロングシートが設置されており、車椅子スペースにすることが出来ます。えっと、座り心地や使い勝手は皮肉にもこちらが一番安定しているように思います(苦笑)
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