福岡県の筑豊地域を走る第三セクターが、世は令和になったものの平成筑豊鉄道です。この程、筑豊の食材を活かした料理を提供するレストラン列車が登場しました。
「ことこと列車」、レールのジョイント音や事消費を楽しむなど、いくつかの意味合いを掛け合わせた名前なんでしょうね。
車両は既存の400形を改造した専用編成を充てています。
新潟トランシスのパッケージ車体を赤のメタリック塗装で塗り上げ、装飾を施してドレスアップしています。
ロゴは大きく二つ、漢字の「事」を縦の線対称に配したものと、ローマ字で「COTOCOTO」を
分割し横の線対称に配したものになっています。そう言えば、車両はトップナンバーと2号車となっています。
文字多めのデザインは…まぁ例のドーンデザインです。ワンマン運転時にあったLED表示機を鉄板で塞いでおり、その上にCOTOCOTOの文字を配しています。
「なんだ、見慣れたミトーカデザインか」…と思いつつも新鮮だったのは、幌を白いものとし、留め具を赤にしてパッと見でオシャレです。恐らく大多数の人は気にしなければ気付かないところですが、こんなところまで気を使ってんだなー、とちょっと一発やられた感じになりました。
車内です。こちらは直方方の1号車から。数をこなせばこなすほど新鮮味が無くなってくるのはもう今さら野暮なので置いとくとして、木を多用したインテリアは「或る列車」の1号車、テーブル席車両に通じるものがあります。車体幅が狭いのと、座席の項でも紹介しますが衝立をやや高めにしているため解放感は無く、ちょっとした個室感を重視したものと捉えます。
ドアです。ステップ付きの片開き式は変わりませんが、黒い化粧板でシックに決めています。
最前面方向です。デッキはありませんが、ボックスが仕切りの役目を果たしています。
車端部とも言える反対側です。検査や入れ替え用として、運転台は残されています。車掌台側はサービスカウンタースペースに転用されています。
天井です。ステンドグラス風のパネルがカラフルできれいですね。
両側の白いパネルに関しても、よく見ると柄が各パネルで異なっています。
窓です。どこぞやの同じ九州の3セクとは違い、外側はきれいに磨かれクリアな視界です。ハコは全く同じ形状なんですけどねぇ‥。
窓はお馴染み木製フレームと簾のロールカーテンとなっています。地元福岡の伝統工芸、大川組子は或る列車でも採用されていたものですね。その繊細さ、日除けに手を伸ばすのがちょっと怖いくらい(^^;;
座席です。1号車は青系の柄が入ったモケットを使用したオールクロスシートとなっています。
4人掛け席です。左右非対称で、肘掛けの長さ、背ズリの高さが異なっています。テーブルは固定式で、折り畳みでは出来ません。
座席のフレームにはロゴのステッカーが貼られています。
向かい側の2人掛けです。肘掛けの先端部分を広げることで、横幅を広く使えるようにしています。同氏が手掛けた「ながら」に乗車した後に乗ると、この辺りは少しずつ見直しながら導入がされているようです。
中央にはかなり幅が狭いショーケースがあります。下段にはなぜだか雑誌が入ってますが・・その理由はまた後程。
床はやはりお馴染みフローリングですが、様々なパターンの模様を組み合わせたものにしています。
キッチンカウンターです。お料理はここで盛り付けられ、各テーブルへ運ばれます。
壁には間延びしないようにするためか、ロゴが入れられています。ナイフとフォークが、食堂車のマークのようですね。
向かい側はディスプレイとなっており、地元の食品やお酒をPRしています。
そしてカウンター付近にも。石灰石や石炭もありますね。
また別の区画。ここはアテンダントさんの業務スペースも兼ねています。
車掌台側を兼ねたフリースペースです。車掌台には記念撮影プレートが置かれています。
サービスカウンターです。先述の通り、元々車掌台のスペースを活用して設置されています。
ディスプレイとして、お酒が氷の上に置かれています。
続いて行橋側の2号車です。こちらは沿線の景色に合いそうな緑が目立ちます。そうそう、両方の車両ともトイレは無く、長時間停車時に済ませることになります。アルコールも売られているため、やっぱりトイレは欲しいですねぇ。
ドアです。足元にはマットが敷かれており、極力汚れを持ち込まないようにしています。
最前面です。こちらはボックスが無いので見通しがいいですね。
上を見ると各種プレート。「九州艤装」のプレートが有りますが、実際に施工を担当したのがそこになります。何でも、そこにお願いしたことで比較的安く付けられたそうな。
中央のデザインは先頭車まで続いています。
窓です。こちらもデザインは同一ですね。
座席です。モケットは緑色ですね。
このドーンデザインのよく無いところと言えば、追加した窓枠の四隅が尖っていること。右側の窓側座席に座ると、肘掛けに腕を置いた時に尖った先が当たります。不快感はともかく、ケガの危険性もあるので見直した方がいいと思います。
向かい側の2人掛けです。
柱部分は上記の心配は無いものの、視界はよろしくありません。
2号車にはロングシートがあります。この区画は1人利用の場合に指定されるケースが多いです。
観光列車ながらこの配置、あまり好きでは無いのですが、レストラン列車ともなるとこの方が提供もしやすいので設定されたんでしょうね。
ロングシートとクロスシートとの間には業務用のボックスがあります。
そして向かい側のショーケース。色調は正反対ですね。
フリースペースです。区間によっては、ここからの前面展望を楽しめます。
コップ等が入れられたケースです。こちらは連結面側の車掌台上にあります。
ここもカウンター、「COTO COTO」の文字が入れられています。
レストラン列車らしく、手洗い場があります。
さてここからは乗車編。今回は7月に乗車、直方発行橋行きです。直方駅ではこのように受付テーブルが用意されます。ここで受付を済ませ、既に入線している列車に乗り込みます。
記念撮影用のボードです。運行再開の特別仕様です。下敷きにされてるボードは…また後程。
お席がこちら。今回は一人乗車でロングシート部分の指定だったのですが、ご時世柄ボックスシートに空きがあったため特別に4人掛け席に変更して頂きました。文鎮代わりに置かれているのは石炭、表面加工がされているので手が汚れることは有りません。
こちらがメニュー。裏面がドリンクで、さすが九州(?)、アルコール類が充実しています。
同じくテーブルに置かれていた工程表。真っ直ぐ行橋へ向かうのではなく、直方⇔田川伊田間を往復し、その後直方→行橋へと向かいます。
お料理が来る前に、地ビールを注文。「TAGAWA 元気が出るビール」、季節によりラベルが変わるそうですね。
まずは前菜とも言えることことボックス。風呂敷に包まれており、これは記念に持ち帰ることも出来ます。
開くとこんな感じ。バランスがよく、健康になりそうです。
程なくして、アテンダントさんからこのようにミニ黒板に書かれたメニューを見せてもらい、説明を受けます。「どれか楽しみなメニューはありますか?」と聞かれますが…どれもうまそうです。
お次は冷製、ブランマンジェ(とのこと)。ほのかな甘味が効いております。食の感想はイマイチ得意では無いので、どうしても一言になってしまいますね(^^;;
次にご飯もの、石炭リゾット鮑のソテー添えです。鮑なんて普段食べないので、それだけで嬉しいですね。
そしてメイン、和牛頬肉のパピオットです。金田駅停車中、包みに入った状態で提供されます。
開くとこんな感じ。何より驚くほど柔らかく作られており、ナイフ無しでも分けられるほどでした。
デザートは、沿線に蔵がある九州菊の枡パフェです。夏らしく、モヒート風味でサッパリした味でした。
この間、アルコール2杯目で「田川トニック」も頂きました。こちらも夏が似合うサッパリさでした。
で、アテンダントさんから見せられた雑誌がこちら、EXILEの黒木さんが乗車された記事です。なるほど、ショーケースに雑誌が入っていたのはこのためでしたか。なお、当日乗車した区画はご本人が座られた区画だったとのこと。なお今回の乗車では、なんと社長さんも乗車の上、各お席に挨拶をして回られてました。私も、お時間の許す限りでお話をさせて頂いた次第。
金田駅には、かつて使用されていたサボ(愛国-幸福除く)や駅名標が飾られています。左下の「義士」って何なんでしょう・・。
油須原駅でもトイレ休憩を兼ねて停車します。国鉄型の電照式駅名標が残されています。
木造の駅舎が残されています。凄い、令和どころか平成を感じさせるものが一切有りません。
無人駅ですが、窓口は残されています。ラッチの先に見える鮮やかな赤、ミスマッチはミスマッチですが車両ごとタイムスリップしてきたような感じでそれはそれで面白いですね。
発車時刻表・・行き先を見ると東日本方面のどこかから持って来たんでしょうね、あくまで雰囲気づくりということで・・。
直方方面ホームには、タブレットキャッチャーがあります(もちろん現在は使われていません)。当駅へやってきた列車がタブレットの入ったスタフをここへ投げて引っ掛け、駅員さんが授受しておりました。台湾では今でもみられるんでしたっけ?
更にホーム反対側には腕木式信号機のレバーがあります。台座を見てもわかる通り、雰囲気作りのためにここへ移設されたものなんでしょうね。タブレットキャッチャーしかり・・。
構内踏切より全景を。この後、行橋駅へ向けて走り出します。
そして行橋駅に到着です。列車はこの後回送列車として引き上げます。色々と難しいかもしれませんが、車内サービスを最小限にしたお手頃な観光列車とかにすると、乗車チャンスも増えそうなのですが‥。
で、この列車の隠れた凄さは、車内で流れるBGM。アテンダントさんに確認したところ、車窓に合わせてプレイリストを作成し、その上で流しているそうなんです。
観光列車(特にお料理を提供するレストラン列車)でBGMを流す例はよく有りますが、長時間乗っていると何回もループして飽きてくることがあるのですが、ことこと列車では多少被りはあるものの、ほとんど飽きが来ませんでした。
今までの観光列車ではあまり見かけなかったので、色々工夫されてるんだなぁ、と思わされました。